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2026/6/5
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「新入生歓迎会の物語」

四月の風が、まだ少しだけ冷たさを残してグランドを抜けていく。

短大の新入生歓迎会―例年なら、学友会の2年生たちが中心となって準備を進めるはずの行事だった。

だが今年は違った。

学友会のメンバーは、なんと「ゼロ」。

誰もいない学友会室の静けさが、その事実をいやというほど突きつけていた。

「どうしようか……」

思わず漏れた教員のつぶやきに、返事をしたのは意外な人物だった。

昨年の歓迎会で、ドッジボールに全力で笑い転げていた2年生の女子学生2人。

彼女たちは、まるで待っていたかのように手を挙げた。

「先生、ドッジボールできるなら、バイト休んででもやりますよ」

「去年、ほんまに楽しかったんです。あれ、もう1回したいです」

その目は、冗談ではなく本気だった。

彼女たちに学友会のメンバーがいない事情を伝えると、むしろ嬉しそうに笑った。

「じゃあ、ビンゴの景品、私ら買いに行きます」

「当日の運営もやります。ドッジボールの準備も任せてください」

頼もしさに胸が熱くなる。

だが、教員にはひとつだけ気がかりがあった。

「ドッジボールを怖がる学生が少なからずいる……」

そう伝えると、彼女たちは、少し考えてから、ぱっと表情を明るくした。

「じゃあ、希望者だけでいいやん」

「歓迎会が終わってから始めたら、参加したい人だけ来れるし」

その提案は、驚くほど自然で、優しかった。

そして迎えた当日。

新入生歓迎会が終わって、体育館には――

30人近い学生たちが、笑顔で集まっていた。

ドッジボール、縄跳び、バレーボール。

思い思いのスポーツを楽しむ声が、体育館の天井に響き渡る。

その光景は、誰かに「やらされた」イベントでは決して生まれない。

学生たち自身が「やりたい」と願い、動き、つくりあげた時間だった。

そして、さらに驚くことが起きた。

このスポーツ交流があまりに楽しかったから―という理由で、

1年生と2年生あわせて20名が、今年度の学友会に入会してくれたのだ。

「こんな楽しいこと企画できるなら、私も入りたい」

そう言って笑う新入生の姿に、胸がじんわりと温かくなる。

学生が主体となって動いたからこそ、心に響いた。

満足感が生まれた。

そして、「自分もその輪に入りたい」と思わせた。

あの日、体育館に響いた笑い声は、

ただの行事を越えて、学生たちの未来を少しだけ変えたのかもしれない。

(保育学科教員 香月欣浩)

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